アニッシュ・カプーア
5階 THE MIRROR作品について/清水敏男
チベットのタンカはこの展覧会に必要不可欠な作品だ。この作品は過去、現在、未来の仏が描かれており、THE MIRRORに時間軸的広がりを与える。四川省の山奥にあるチベット仏教覚嚢派の画僧が描いたものだ。作品解説を付す。
《作品の中央は釈迦牟尼(しゃかむに)である。サンスクリット語(梵:शाक्यमुनि)の音読みからつけた。 釈迦は彼が出家する前の部族名で、牟尼は聖者・修行者の意味。彼は自分が苦行をして、世の中全ての人々に慈悲深く、善良に接することが人生の真理だと主張していた。
右側の燃燈仏(ねんとうぶつ)は、釈迦が前世で儒童梵士と呼ばれ修行していたとき、未来において、悟りを開き釈迦仏となるであろうと予言した仏である。
左側は弥勒菩薩(みろくぼさつ)である。弥勒は音写であり、「慈しみ」を語源とするため、慈氏菩薩(”慈しみ”という名の菩薩)とも意訳する。
三世仏の周囲は釈迦仏陀の弟子たちである。瑪哈嘎拉護法、 四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)、大鵬金翅鳥等は三世仏の意志を伝承し、三世仏の身を守っている》
宮脇晴は名古屋の画家である。1917年に名古屋で岸田劉生の絵画展があり、感化された画家たちが愛美社という団体を立ち上げた。宮脇晴はわずか15歳で参加した。この作品は1919年画家が17歳のときの作品である。高橋由一の凝視する目が岸田をつうじて宮脇につたわっている。デューラーの伝統も感じられるだろう。
李禹煥の作品の点が、いかに厳しい点であることか。ここには時間軸とは関係ない、絶対的な時空である。
中西夏之は背後に宇宙のパワーを感じて作品を描くという。この絵の鑑賞者は背後にタンカの存在を感じるだろうか。
中央のアニッシュ・カプーアの彫刻は、全宇宙を映し出し、そして飲み込む。
このフロアーには松岡正剛のブックウエアがある。
知の集積そして知の編集はTHE MIRRORに不可欠である。《屋根裏の書斎》というコンセプトだが、この屋根裏には屋根がない。隈研吾は松岡の屋根を五色の雲にしてしまったからだ。
浅葉克己の部屋もまた書斎の移動である。青山にある浅葉の仕事部屋には浅葉の作品が展示され書籍がうずたかく積まれている。ここではその一部を垣間みることができる。
一番奥まったところに隈研吾のつくった《瞑想の部屋》がある。
五色の雲のなかに浮遊し、しばし静謐なときを過ごしていただきたい。
Untitled
2004
Stainless steel
43.2 x 74.9 x 61 cm
Photo Kaoru Suzuki
© Anish Kapoor